「そろそろ帰ろうかな」
頭の中を支配し続ける悩みの種をふるい落とすように勢いよく立ち上がると、大和が素振りを止めた。
「うっし。
じゃ、オレも終了~。
オレ、アヤのボール磨きに付き合ってるせいで腕とか太くなった気がする。
見ろよ、この逞しい腕」
力こぶを作って自慢気に笑顔を向ける大和は、まだまだ子供っぽい。
17にもなってこんな無邪気な笑顔で笑える男なんて大和くらいなんじゃないかな…
きっと、大和はいつまで経っても変わらないんだろうな…
これからもずっと…
「素振りなんかより、走りこんで足腰鍛えないよ。
夏は9回投げきって見せてよね」
「余裕だね。
15回まで延長になったって投げきってやらぁ」
「そんな気力があるんなら9回で押さえきりなよ。
本当に大和は昔から口ばっかりなんだから」
また1つイヤミを言ってからボールの入ったカゴを持ち上げると、大和が片方を持ってくれた。
ビール瓶が入ってるカゴを連想させるボールのカゴを2人で部室に運ぶのも毎日の日課。
そして…
「アヤはチビだなぁ。
もっと上で持て」
「男ならあんたがあたしに合わせてよ」
2人の身長差のせいで出来てしまう、アンバランスなカゴを挟んで文句を言い合うのも日課。
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