【短編】よわ虫kiss



大和の言葉は、いつもなら聞かないような愚問だったから。


なかった事にできんのかよって…

そんなの…



…できる訳ないじゃない。

それは…大和が一番よく分かってるはずなのに…


それを言葉にしてあたしに答えを求める大和は、きっと不安でいっぱいなんだ…


だけど…



「…なかった事にするよ」


『できるよ』とは答えられなかった。

そんな自信なんて、これっぽっちもない。

…なかった事にするつもりも、ないもん。


だって…

大和を切り取ったら…あたしには何も残らないもん。


そんなの無理…

絶対…無理。


あたしの中から大和を切り取るなんて…一生かかったって、無理…





「…―――っ…やっ…」


大和が急に乱暴にあたしをフェンスに押し付けてきて、その荒々しさに思わず恐くて声が漏れた。

あたしが顔を上げて大和を見ると、大和は眉をひそめてつらそうに表情を歪めていて…


そんな大和に、胸がズキンと痛くなる。



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