【短編】よわ虫kiss



傷付かないでって思うのに、同じくらい、傷付いてって思ってる。

別れたいって思ってるのに、同じくらい…ううん、それ以上、別れたくないって思ってる。


だけど…

別れないで遠恋するなんて、そんなつらいのも無理で…

出来るわけなくて…


自分のしたい事が分からない。


大和のためだと思ってした決断が、あたしの中で音を立てて揺れる。



沈黙になのか、自分の感情になのか、

苦しくなって空気を深く吸い込もうとした時、あたしの横でしばらく黙っていた大和が口を開いた。


「引っ越すらしいな。

おばさんに聞いたよ」


「え…」


大和が引っ越す事を知っていた事にびっくりして、あたしは大和を振り返った。


そこには、穏やかな顔で少しだけ笑みを浮かべる大和がいて…


あたしの想像していた泣き出しそうな大和はいなかった。


だけど、大和の眉はひそめられていて…

それが、苦しそうに、悲しそうに、寂しそうに見えた。


今、浮かべている穏やかな表情が偽物の事を物語っていた。


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