キィーン…
憂鬱な気持ちを吹き飛ばすような金属音が心地よくグランドに響く。
真っ青な空に飛んでいく白球は雲と同化して見えなくなるほど高く飛んでいった。
「オーライッ」
センターがおでこの辺りで構えたグローブに見事に吸い込まれた球が、ポスっと小さな音を立てた。
あたしは、顧問に頼まれたスコアブックの整理をしながらその様子を眺めてた。
もともと野球が好きで、本当なら中学でもマネージャーがやりたかった。
だけど、中学の軟球野球部はマネージャーなんて募集してなくて…
その時のショックは今でも忘れない。
だから、高校に入ってマネージャーになれた時には飛び上がるくらいうれしかったんだ。
地味な仕事も嫌じゃなかったし、たまに暴投されたボールがあたってあざになるけど、それもまぁ許せる。
…その暴投したのが大和だったら文句が飛ぶけど。
「五十嵐ー、ピッチング始めるぞー」
キャプテンの声に、フリーバッティングをしていた大和が帽子をかぶりなおしながらグランド端に用意されてる小さなマウンドにあがった。
大和の投球ホームはすごくなめらかできれいだと思う。
…惚れた弱味とかじゃなくて。
腕を振り上げた時の肘の曲がり具合だとか、踏み出した足とか、ミットだけを見つめる真剣な目とか…
見ててドキドキする。
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