これっぽっちもおばあちゃんの心配をしなかった自分が恥ずかしくなって、きゅっと唇を噛み締めた。
噛み締めた下唇が少し痛いほどに噛んだ後、おばあちゃんの笑顔を思い浮かべる。
先月会った時、おばあちゃんは風邪がなかなか治らないって言ってた事を思い出した。
あたしに移っちゃいけないからって…マスクして、あたしと距離を置いてたおばあちゃんの優しさに胸が痛む。
帰り際にくれたお小遣いと笑顔が…胸を締め付ける。
「おばあちゃん、最近元気なかったもんね…」
「まぁ、歳だからな…
1人で暮らすのも、なかなか大変だし…寂しいだろうしな」
「お父さん、仕事は…?」
「大阪からでも通勤できるから大丈夫だよ」
そう笑ったお父さんは、優しい顔をしていて…
いつものふざけたお父さんじゃなかった。
きっと…
きっと、あたしのいないところでたくさん考えて、お母さんと話し合って決めた事。
おばあちゃんのためを思って…
それを嫌だなんて…言える訳ないじゃん。
そんな冷たい事、言える訳…ない。
あたしに選択肢は委ねられたのに、自分の希望を口にするのがひどくわがままに思えた。
ひどく、自分勝手に思えて…
あたしはドクンドクン嫌な音を立てる心臓を感じながら、ゆっくり口を開いた。
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