「距離的には通えなくもないんだ。

だけどな…おばあちゃんちの近くに城ノ内付属高校っていう同じレベルの高校もあるし…できたらそっちの方が安心なんだ。

やっぱり遠くまで通わせるのは心配だし、アヤは電車通学もした事ないだろ?

それに、城ノ内なら大学まであるし、アヤの専攻したがってた科もあるから将来的には便利だろ」


城ノ内…

聞いた事がある。

確か、甲子園の常連高校だ。

この春も、出場してたはず。


…だけど、今は甲子園どころの話じゃない。



「…いつ…引っ越すの?」


「なるべく早くに考えてるよ。

ただ、アヤの学校の問題もあるから…夏休みに引っ越す感じかな」


「…ふぅん」


あたしの低い小さな声に、お父さんが少し心配そうな表情を浮かべたのが分かった。


そんなお父さんから、あたしはなるべく自然を装って視線を外す。


…別に冷静ぶろうとしたんじゃない。


大人ぶって、感情を隠したわけじゃない。


ただ…それしか出てこなかっただけ。


そんな急な話に戸惑わずにいられるほど、あたしは大人じゃないし。


…いつもの強がりなんて、用意してなかったから。



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