優等生の背中に向けて、心の中で「ありがとう」を唱え、ガムを口に放り込む。

刺激的なミントの辛さが舌の上に広がる。

でも、やっぱり頭は冴えないままだった。

昨日の夜、恭一の前から逃げて家に着いても、恭一からずっと電話やメールがきていて。

仕方がないから着信拒否を設定し、メアドもすぐに変えた。

おかげで静かになったけど…

あたしの心は晴れない。

だったらどうしたら良かったの?

あんなコト、言わなければ良かった?

いや、言わなかったとしても、きっと心は晴れなかったはずだ。

この暗い気持ちはどこからきてるんだろう。

嫉妬?

ちがう。

そうだとしても、それは恋とかじゃない。

あのハルカって人が、あたしの知らない『あたしの過去』を知ってたから。

恭一があの人に、ぜんぶしゃべってるってわかったから。

ムカついてあたりまえだ。

別に、この感情は特別なものなんかじゃない。

あたしはそう、自分に言い聞かせた。