「ん、おいしい」
春とはいえ、夜は冷えるから湯冷めしないようにしなくちゃね。
テレビのリモコンを操作して、安倍キヨリの出演しているチャンネルに切り換えると、タイミングよくオープニングが始まった。
賑やかな音楽が流れて、観客の歓声と拍手、そして番組名がどどんと中央を埋めた。
有名司会者のタイトルコールが始まって、タレントを順に紹介していく。
そのとき、名を呼ばれると同時に黄色い悲鳴が上がった。
安倍キヨリだ。
スタイリストが用意したおしゃれなブランド服を難なく着こなすスラリとした体躯、柔らかな癖のある薄茶の髪、整った中性的な美貌、どこか冷ややかな瞳は黒曜石のような深みのある光を放っている。


