そのときになって、突然車道へ身をおどらせたあたしを母が引き止めようと抱きかかえたんだ。
あたしは泣きながら、女の人が自分の腕を掴んでいると訴えて、
「きゅうきゅうしゃ! きゅうきゅうしゃ!」
って連呼していたらしい。
恐怖のあまり錯乱して、記憶は曖昧だったから詳しく説明できないけれど、そういうことがあった。
あのあと母は、あたしの突拍子もないそんな言葉でも信じてくれたらしくて、救急車を呼んだ。
母には女の人の姿なんて見えていなかったのに。
あたしの腕に強く握りしめた手の痕があって、爪を立てたような傷までついていて、青ざめながら必死に宥めてくれたんだ。


