「詩月!?」



理久が詩月の肩を掴む。




「おい!?」



理久は詩月の耳元で繰り返し詩月を呼び、肩を激しく揺さぶる。



詩月は全く動かない。



妹尾の弾く、ヴァイオリン演奏を食い入るように聴いている。




「凄い集中力!」




「彼女、また彼にちょっかい出してるのね」




「編成変更後の楽譜、彼に渡してないのか?」





「ヤバくねぇ、惑星の『第1楽章火星』部分を省いて、『第4楽章木星』と『第7楽章海王星』に変更されてるよな」



楽譜と各々の楽器を手に練習ホールに集うオケのメンバーが、妹尾と詩月の様子を窺い、ざわめく。




「ちょっ、今の話!?」




「あんた、誰!? 周桜の知り合い?」




「ええ、フィルの練習風景を観てみたくて」




理久は適当に話を合わせる。





「で、今の楽譜がどうの……って話、どういうことなんですか?」