静けさの戻った路地。


少年は楽器をしまい肩に担ぐ。


俺は去ろうとする少年の背に声をかけた。



「俺は、大二郎。名前は?」


「……詩月(しづき)


ひと呼吸おき、そう名乗る。



俺は薄く微笑んだ。



「覚えておこう」





話し終えた紳士にマスターが、暢気な声をあげた。



「上手くなった」


「でしょう!?」



言いながら、マスターは店のレジ付近に目を向ける。


四つ切りのポスターに、ヴァイオリンを弾く少年の姿が写っている。



「ほお……」



紳士はしげしげとポスターを眺める。



「いい顔になったな」


ポツリ、呟き微笑んだ。