「あなたは決して『ローレライ』ではない。

あなたの音色を聴いていると、竪琴奏者『オルフェウス』が浮かんでくるの」




オルフェウス――。

ローレライとは対極にいる者。



「神話に語られる幽玄の竪琴奏者『オルフェウス』、ローレライを鎮めた唯1人の英雄よ」



ヴァイオリン演奏を聞きつけ、忙しなく廊下を駆けてくる数人の足音。


勢いよく音を立て、病室の扉が開けられる。


マネージャーに駆け寄る、Xceon(エクシオン)のメンバーの3人をマネージャーは満面の笑みで迎え、両手を広げた。



「ずっと、観てるから。

ずっと応援しているから。

昴、遥、空。頑張れ、誰よりも輝け」




凛とした力強く優しい声に、Xceon(エクシオン)のメンバーが誰かれともなく、嗚咽を漏らす。




「オルフェウスの竪琴の調べみたいね、あなたの音色は」


僕の隣りで緒方が囁くように言った。