「俺さ、ずっと咲良が好きだったんだ」
「なに、よ。急に」
「これからもそばにいると思ってた」
「ね、ぇ、やだ」
「誰よりも、ただ好きで仕方がなかった」
「わたし、聞きたくな、」
「聞いてくれ!」
……ずるい。アキは、ずるいわ。
強く掴まれた両肩の痛みと反して震える声にわたしはなにも言えなくなる。
それがわかったのか、アキは徐々に力を抜いていった。
ずるずると滑っていった手が腕にふれている。
「咲良を泣かせない人になりたかった。なれたと思ってた。
だけど、そうやってひとりで突っ走って、咲良の気持ちと重なることは出来なかったんだ」
俯くアキの茶色の髪がゆらり、ゆらりと揺れる。
「周りが見えなくなって、長い間咲歩の気持ちに気づいてやれなくてごめん」
思い出したように痛む胸には気づかないフリ。
わたしは静かに首を横に振った。
「桜田と初めて会った時、咲歩たちがトイレに行ってる間にあいつと話をしたんだ。
俺のこと知ってたみたいでびっくりしてさ、それで……。
桜田じゃないとだめだと思ったよ」
「────そう」
知らない内にアキは大人になっていたのかもしれない。
そう思うと切なくて、憂鬱な気分になる。

