ベランダ越しの片想い





「は、え⁉︎ 咲歩⁉︎」

「あ、危な、っ」



次の瞬間、うわぁああああ、と声を上げて倒れこんできた彼に巻きこまれた。

肩と背を思い切りアスファルトに打ちつけてジン、と痺れる。



「いったぁ……」

「ごめ、大丈夫か⁈」



身を起こし、自分の方が痛いに決まっているのに、自分のことよりも先にわたしを心配するアキ。



大丈夫と言葉を返し、わたしも彼に支えられながら起き上がる。

向かい合う状況で落ち着いてしまい、冷や汗が流れる。



「咲歩、なんでそんなところにいたの。
もしかして、聞いてた?」

「し、知らない」



うわー、と羞恥から頭を抱えるアキから顔をぐっと下げる。

目を隠すように前髪をかける。



ふ、と息をするように笑う彼に神経を集中させて髪越しに見やる。



「よかった、話してくれて。
逃げないでくれて」

「……っ」



本当は今も逃げたいのだけれど、と思いながら唇をまた強く噛み締める。