ベランダ越しの片想い





口元を手で押さえて涙を呑みこむ。

喉が痛い、熱い。



アキ、アキ、アキ────。



繰り返し彼の名前を思い浮かべると、我慢しても我慢しても、涙が滲んでどうしようもない。



はあ、とそっと息を吐くと、彼のいる方からジャリッとアスファルトを踏み締める音。

部屋に戻るのかと思ってさみしさを感じながらもどこか安心すると、





「だから、今度は俺が」





なんて言う意思の強い声が聞こえた。






深く意味を理解できずに、だけど慌てて顔を上げる。

すると、ベランダの手すりの上に立ってわたしの部屋の方へ右足をかけ、簡単にベランダを乗り越えてきた────そう。



























アキと目が合った。