ベランダ越しの片想い





────ずっと、『好き』なんて明確な言葉にすることが恐かった。



だって、口にしてしまったら、もうおしまい。

それは人と人の関係を変える合図の言葉。

アキに告げる前のわたしには戻れなくなると知っていたから。



なのに、言ってしまった。

……言ってしまった、なにより彼を傷つける言葉を。



パラリ。パラリ。

呆気なく、剥がれ落ちていく。

君が手に入らなくても、平気でいられたわたしがどこにもいなくなる。








バッと勢いよく窓を開けて、脱兎の如く素早い動作で自分の部屋に舞い戻った。

カーテンも閉め切って、だらんと手から膝から肩から、力を抜く。



ベッドに腰を下ろし、そのまま体を倒した。