悔しい。悔しい、悔しい。
どうしてわたしと清水さんはこんなにも違うのかしら。
名前に同じ『咲』が入っていて、似たような黒髪。
わたしだって料理や読書などの家庭的なことが好き。
人見知りが激しいのも変わらないのに。
……こんなにも、違う。
切なくて、甘くて、どこまでも透き通った恋する瞳をしている清水さんみたいになりたかった。
彼女にわたしが頼んだことはなんて身勝手なことだったのかしら。
みんなみんな、……我儘でしかないわ。
……わたし、アキのそばにいたい。
幼馴染なのに。
過ごした時間は清水さんよりも長いはずなのに。
ベランダで話だって聞いていたはずなのに。
付き合っていなかったなんて、知らなかった。
そんなのはもう、懲り懲りよ。
────誰よりも近くて遠い、あの場所へ帰ろう。
君には全て内緒にして。

