ベランダ越しの片想い





「わたし、ね。
川崎くんのこと、好きだよ」

「っ、」

「でも、これは恋じゃないの。
付き合おうと、付き合えると。
そう思ったこともあったけど、やっぱり無理だったんだぁ」



一度はそう思ったの……?



そんな。まさか。それなら。

ねぇ、どうして。



思いもしなかった言葉で、ずるいことに焦りと痛みを感じる。



「わたしの一番は、桜田くんなの」



その名前は初めて耳にしたけれど、彼女の言葉の響きから、彼氏の名前だと簡単にわかった。



桜田くんについて考えていると、続けざまに「だから、川崎くんを傷つけることになっても、桜田くん以外の人と付き合うことは出来ないよ」と。

眉を下げた笑顔のような泣き顔のような、そんな読めない表情で言われた。