ちょっとの間、一人きりになったリビングで考える。

ユキセンセって、元々女の子に対して、ああいう物腰の人なのかな? 下心とかそういうのは、やっぱり感じられないし、そういういやらしいものじゃなくて。

なんか、子ども……って歳下のわたしが言ったらヘンだけど。
邪気がなくて、本心から、そのときに感じたことをただ口にしてるっていうか。
だからきっと、これは特別気にしなくてもいいのかもしれない。

俯き佇むわたしの後ろから、ガチャっとドアの開く音。

慌てて、いつもと同じ顔と声を取り繕おうとしながら、振り向いた。


「あ……じゃあ、とりあえずわたし、コーヒー淹れ――」


ちょっと無理した笑顔だったかな、なんて頭を掠めつつ言うと、突然視界が真っ暗になる。
わたしの声が、途中でかき消されたのは、爽やかなミントの香り。

それはつまり――――お風呂上がりのユキセンセの胸の中……だったりするわけで。

『なぜ?』と思うだけで、わたしの体は彼を拒否することはしない。
それに対しても『なんで?』と思うけど、今はそれよりもドキドキがうるさい。


「せっ、センセ」
「んー?」
「あああ、あのっ」


わたしがテンパっても、ユキセンセはそれに気付いていないのか。きゅ、と腕を回されて、わたしの頭頂部に頬を乗せる。


「な……なに、を……?」


掠れた声でようやく聞いてみると、やっぱりセンセは手も顔もそのままの状態で、「んー」と口にするだけ。
そして、少ししてからこう言った。


「ちょっと、充電」


じゅ、「充電」……?!
わたしが電池で、センセがなにかの機器でしょうか。まぁ、確かに、センセの仕事振りは、なにかの機械のようにも見えますが。

というか、なぜ、その“電池役”がわたし?!

全く掴めないユキセンセに翻弄され続けるわたしは、ただただ、彼にされるがまま。

だけど、自分で気付き始めてることがある。
そんなふうに、ユキセンセに“必要とされてるっぽい”ことが、いやではないこと。

それと、かなり、ドキドキとしてしまうこと――。