いつしか手を繋いだまま、夜の道を二人で並んで歩いていた。数十メートル歩いたところで、ようやくひとつの予想を立てる。
ありえないけど、彼なら――と思うような仮定が。

もしかして、“仕事”だったりして……。
というのは、ユキセンセの仕事は漫画を描くことで、いろいろな取材もしてるようだし。

ついこの前も取材に足を運んでた。
そのときにも、言ってたし。

『神様に、誓うよ』って。『おれが好きなのは、あんただけだ』って。

あんなふうに、日常に仕事のことを考えてしまう人なら。
もしかして、その延長で……その……いろいろと……してるのかもしれない。


必死で理由を考えて、そこまでいきついた。でも、だからって、キスの事実は消えやしないし、今現在、繋がれてるこの手だって変わらないわけで。

気付けば、駅目前。結局なにも言いだせないわたしは、窺うようにセンセの横顔を見上げた。

あと信号ひとつで駅につくとき。信号は青なのに、彼は足を止めたままにする。


「あ……の?」
「……行くの?」
「え……」


「行くの?」って。それはどういう意図があってのセリフなんでしょうか。
そして、なんて答えるのが正解なの?