そうだ。今日はハルに『帰る』って言ってたんだった!
どうせもう寝てるとは思うけど、明日の朝、起きてわたしがいなかったら怒るだろうし。
「あ、でもすみません。ちょっと凝ったものは……時間が……。今日は帰る約束しちゃって」
弟との約束をこんな直前に思い出すなんて、今まであまりなかったことだ。
それって――……裏を返せば、ココにいると、ココのことで頭がいっぱいっていうこと……?
「……『約束』?」
もうすっかり乾いた髪に、ボーッとしながらドライヤーで同じ動きを繰り返していると、ユキセンセが突然目を開けた。
「あー……はい。朝、わたしがいなかったらふてくされると思うんで」
そう説明しながら、頬を膨らませて口を尖らせるハルを想像して笑ってしまった。
「……わかった。じゃあ、ご飯は大丈夫だから」
「え? あ、でも」
「買い物の流れで駅まで送るよ」
スッと立ち上がったユキセンセは、さっきまで、ふにゃんとした顔つきだったのに、急に真面目な顔になる。
わたしはドライヤーを止め、片付けると、靴を履くユキセンセの後を急いで追った。