そんなわたしを一人置いて、ユキセンセはなんでもないことのように、ドライヤーを片手にリビングに出戻ってくる。
どんな状況なんだろうか、これは、と思いつつも、わたしはそれを受け入れた。


「あー気持ちい」


ブォーッと騒がしい音の合間に、リラックスしたセンセの声が耳に届く。
ソファに座り、少し顔を仰向けにして目を閉じる彼の髪を、後ろに立って乾かすわたし。

こんなこと、弟にしかしたことないから、手が震えてそう。

緊張が気付かれるとなんだか恥ずかしいので、なるべく平静を装って、おでこを出してるセンセに話し掛ける。


「なにを買いにいくんですか?」
「んー……イロイロ」
「食事なら、もしかしたら家にあるもので作れるかもしれませんけど……」


食べたいものが決まってるなら、もしかして、買い物はわざわざ行かなくてもいいかもしれない。
そうしたら、ユキセンセもまだゆっくり出来るよね。


さらりと、わたしの指を彼の柔らかな髪に差し込んで、温風をあてる。
その風に乗って、シャンプーのいい香りがした。


「うん。ありがとう」


センセのお礼と同時に、ハッと思い出す。