「ば、バカ……!」


自分で勝手に思い出して、顔を赤くする。
自責の念を込め、両手を頬にぱしっとぶつけ、騒ぎ出す心臓を制御させようと深く息を吸った。


「どうしたの?」
「ひゃあっ」


大きく息を吸ってたために、より大きな声を漏らしてしまう。
ぐりん、と顔を後ろに回すと、タオルで濡れた髪を拭きながらわたしを見下ろすセンセがいた、


「なっ……なんでも!」
「……じゃ、行く?」
「えっ。それ、ちゃんと乾かさないんですか?」
「すぐ乾くかなーと思って」


へらっと軽く笑いながらいうユキセンセを見上げると、わたしの世話やき精神がうずうずする。


「せっかく治ったのに、ダメです」


耐えきれずに言うと、ユキセンセはきょとん、と目を丸くした。
そして、無邪気に笑って言う。


「じゃあ、乾かして」


タオルを外した彼が、わたしにその濡れた髪を差し出すように顔を近づける。
予測不能なその行動に、びっくりしすぎてすぐに声が出せなかった。


「ドライヤー持ってくる」