「似てる……」
「だれに?」
「ひゃっ!!」
後ろから聞こえた声に、大きく肩を上げ、思い切り本を閉じた。
そろり、と振り向くと、片膝に肘を乗せて頭をかいてるユキセンセがいた。
「おはよ」
「お……おはよう……ございます」
夜なのに、ヘンな挨拶。
そんなことを頭の片隅で思いながら、漫画を元に戻して話を逸らした。
「あー……お腹、空いてます……?」
カズくんには、口実で『ご飯食べたいって言ってた』ふうに言っちゃったけど、実際はそうわけじゃない。でも、わたしの仕事は“それ”だから、そんな声掛けしか出来なくて。
「うん。あ、一緒に買い物行こう」
「え? 今から?」
「24時間やってるとこあるから。準備するから、少し待ってて」
ギシッとソファから立ち上がると、ユキセンセは天井に向かってしなやかな腕を真っ直ぐ伸ばし、リビングから出て行った。
バタン、バタン、と扉が開け閉めする音がしたあとに、水の音が聞こえてくる。
ああ、シャワーを浴びてるんだ。そうだよね。仕事もあったし、すっきりしたいよね。
シャワー……脱ぐ……ハダカ…………はっ。
なんとなく考えていただけなのに、わたしの頭は突然にあの記憶を呼び起こす。-
あの、ベッドを振り返ったらユキセンセが、上半身ハダカになってたことを。