「……えっ、と――――」


これは、なに?! ユキセンセ、寝ぼけてる? センセって、寝ぼけグセが強いのか……。


腰に巻きついているセンセのウデが、わたしを引きこんで拘束されてる。
広い胸に埋まった顔を離そうと、顔の横にある自分の両手に力を込める。けど、ちょっと距離が開くくらいで、腰から密着させられてるから、完全に離れられない。

どうしようかと困惑していたら、ユキセンセの声が、彼の胸から響いてきた。


「……起きるまで、居て」
「――――え?」
「帰んないで」


ゆ、ユキセンセ、起きて……?!

考えても見たら、寝てるのにここまで手に力が入るってないよね、普通。
じゃあセンセは起きてたの? いつから?

え! もしかして、わたしがセンセの寝顔を見ていたのも――――!


くっついてる身体が、さらに熱くなる。


ていうか、こんな状況! もしあの二人が起きてきたら!
言い訳しようがないし! うまくごまかすなんてスキルもわたしにはないっ。


動揺しているわたしは、力をさっきよりも入れてみたけど、やっぱりセンセの手には敵わないらしい。


「約束、して?」
「しっ……します、します! だから――」


そこまで言うと、『離してください』と言う前に、すんなりと解放された。
ユキセンセは、わたしの乱れた髪をさらっと撫で、今にも閉じそうな瞳で笑った。
そして、本当に、瞬く間に眠りについたのだ。


「な……なんなの……」


一気に力の抜けたわたしは、その場に座り込んで、ス―ス―と心地よさげに寝ているユキセンセを唖然として見ていた。