「……梱包……」


視線の先の唇が、薄らと開いてそう発音した。
わたしの視線に気づきもせず、ユキセンセは、黙々と今仕上がったばかりの原稿を纏め、この前と同じ状態に梱包した。


「これ――」
「はい。出しておきます」


最後のガムテープを切るのと同時に掛けられた言葉に、先を読んで返事をする。
センセは手元を見たままなにも言わなかったけど、口元が少し笑ってたからそれが返事だと受け取った。

まるで宙にでも浮いてるかのように、ユキセンセは足音も立てず、またソファに倒れ込んだ。

同じことの繰り返し。きっと、今までもこれからも。
こうしてユキセンセは日々仕事をしていくんだなぁ、と思いながら、また布団を掛ける。

すぐにインターホンが鳴り、頼まれていた原稿を手渡すと、わたしもなんだか『終わった』感を感じていた。


……前回は、大体10時間くらい寝てたから、今回もかな。てことは、今は夕方だから……夜中?


ユキセンセの寝顔を見る。

『うちのもう一人の弟はユキセンセよりも歳下なのに、こんなに可愛い寝顔、してないな』なんて思いながら。

寝顔を見ながら、ふと、センセが風邪をひいてたことを思い出す。


そういえば、熱、下がったのかな……。


そっと、気付かれないように、と手を額にあてる。
どうやら熱は完全に下がってるようだ、と思ったときに、わたしはバランスを崩した。

“崩した”というよりは、“崩された”。

“彼”に――。