「終わった」


ユキセンセは言いながら、ふいっとカズくんたちへと顔を向ける。
前回同様、二人は大きな声で「お疲れさまです」と労い合うと、席を立つ。

カズくんは大きな欠伸をし、ヨシさんは目頭を指で押さえながら。共通して、ふらりふらりとした足元で、就寝仕度にリビングを出ていってしまった。


パタン、とドアが完全にしまったのを見たあとに、またセンセへと顔を戻した。


――あ。また。


少し上向きの顔に、いつのまにか外したメガネ。
目は閉じていて、腕をだらんと下に垂らして脱力状態。


今日の位置からは、夕陽を横から浴びてるセンセが正面から見れて、ちょっとした“絵”みたい。
ああ。今気付いたけど、ユキセンセって、センセが描く絵に似た雰囲気だ。

柔らかそうな髪と、スッとした鼻筋と。
手とか腕とか、肩とか喉とか。そういう些細な箇所を意識して見てみると、意外にも、漫画で登場してくるような男の人だったりして。

――綺麗だ。


時間が動いてるのも忘れて、わたしはまた彼を飽きもせずに見つめ続けた。

しばらくして、ゆらりと体が前に動き、上げてた顔が元に戻っていく。


あの、唇。
わたし、確かに、センセにキス――――された、よね……?


時間が経つにつれ、薄れていく自信。
でも、抱きしめ、触れられた熱は、体が覚えてる。