締切日。あと数時間、という黄昏どき。
今回は前回よりも、よりカオス状態に陥っていた。


そりゃ、そうだよね……今回はさらに時間がなかったみたいだし。
それでも、なんだか昨日、ユキセンセが電話したりして、半日くらい締切延ばしてもらったようだけど……。


相変わらずほとんど無言のセンセに、ついに残る二人も口を開かなくなったのは今朝頃から。
だからわたしももうなにも言わずに、飲み物が無くなれば、さりげなく淹れなおすだけだった。

飲み物と言えば――――。

昨日、センセに最初に差し出したカップの中身は、いつの間にかなくなっていた。


「――ミキちゃん」


コーヒーを全員に配り終えたのと同時に、ユキセンセに呼ばれて心臓が跳ね上がる。
バクバクと落ち着かない心臓を抑え、センセの後ろ姿を見て続きを待った。


「今、印刷してるから。それ、順に並べていって」
「は、はい」


こっちを見ることもなく、わたしに指示してる間も右手は動かしながら。
ユキセンセから、また新たな指示を受けられたことは、例え簡単なものとはいえうれしかった。
だけど、一度もわたしの方を振り向くこともしなかった背中が、ちょっと淋しくも感じる。


状況が状況なんだから、それも仕方ないこと。
もう少し、わたしにも出来ることがあればラクさせてあげられるのにな。


センセの後方にある、普通のオフィスにあるのと同じコピー機の前に立ちながら唇を噛む。


なにを考えてるのよ、わたしは。そんな都合よく自分に出来ることなんかあるわけないでしょ。
こうして手伝いさせて貰えるだけ、居てよかったじゃない。


ガ―ッ、と、静かなリビングに大きな音を上げながらコピー機が紙を生み出していく。

刷られたページを眺めていると、昨日読んだ漫画のキャラクターと目が合った。


あ。この子、また出てるんだ。“あゆみちゃん”。
バスケットって、わたしも詳しいルールは知らないんだけど、このマネージャーのあゆみちゃんもあんまり詳しくないみたいで。

懸命に頑張ってる姿とか、なんか応援したくなる子だったんだよね。
こう……自分に通じるものを感じちゃって。

わたしも一緒に、認められていってる気がして。


ピピピッとコピー終了の音で、漫画の世界から呼び戻された。