いそいそとキッチンを綺麗に仕上げて、さも、『やることがあります』ってユキセンセを見ることをせずに、濡れた手を拭いた。
その手を一回止めて、ひとこと添える。
「眠くなるような成分が含まれないものを、選んだはずですから」
それだけ口早に告げ、「洗濯します」と流れるように言いながら、そこから動かないセンセを横切って、わたしはリビングをあとにした。
「……はーっ……」
洗面所に滑り込むように入ると、ひとりきりの空間に思わず大きな息が出た。
「……下手すぎる」
鏡に映る自分に苦言を呈す。
でも、もうひとりの自分が、『わたしに、上手く切り抜けられる術なんて、あるわけないでしょ』と反論してくるような顔をしてた。
「そりゃそうだ……」
完全なる独り言。
それでもこの状況をひとり、胸の内にしまっておくことが出来ないわたしは、それだけでも少し心が軽くなる。
「あと一カ月、どうしよ……」
普通に出来るかどうかなんて、正直、自信ないよ……。