「……ご、ごめんなさい……クセで……」


こんな状況になったときに、ようやくあの“感覚”の正体がわかるなんて。

そう、これはたぶん、“クセ”のようなもので。
今日の一連の感じは、歳の離れた弟に対する感覚だったんだ。

今年から小学生になったから、ずいぶん手が離れたけれど、こんなふうに病気になったりしたら、まだまだ甘えてくる年齢。
仕事が忙しい両親よりも、わたしのほうがずっと時間に融通もきくから、この6年間は積極的に面倒を見てきたつもりだけど。

だけど、まさかそれが、こんなときに出てしまうなんて。


「あの、ほんと、すみませんっ! わたし、片付けてきます、ね…………っ?!」


わたしが器をテーブルに戻し、そそくさと部屋を出ようとしたら、突然手首を掴まれた。
びっくりして足を止め振り返ると、同時に、ユキセンセに引き込まれる。


「???」


今、置かれている状況が全く理解できないわたし。


え? ユキセンセの胸に頬をくっつけて、抱きとめられてるのは現実……?


「あ、あの……」
「――――『クセ』……」


密接した腕の中から、ぽつりとひとことだけ彼の声が聞いて取れたけど、意図することはさっぱり。
相変わらず疑問符がわたしの頭の中を占拠して、ふっと顔を上げてセンセを見た。


「……え? ――――っ」


――瞬きをする暇もないくらい。
気付いたら、目の前に影が近づいてきて、わたしの唇に熱を感じた。