「うどん?」


わたしがその感覚を記憶から手繰り寄せていると、袋からはみ出ていたうどんを見て、ユキセンセが目を細めて言った。
きっと、メガネを外してるからよく見えないのかもしれない。

わたしは考えるのを中断して、うどんを手にしながら聞く。


「嫌い……じゃないですか?」


なんにも確認しないでいたから、いまさらだけど。
うどんとか、好き嫌いなさそうに思えるけど、もしかしたらダメって人もいるよね。

もし苦手ならおかゆでも――。


「…………好き」


「好き」という言葉に、思わず反応して顔を上げる。すると、いつの間にか隣に来ていたユキセンセと目が合った。


「そ、そうですか! 良かった!」


「好き」って、うどんのことでしょ! 当たり前じゃない!
だけど、ユキセンセのあの長い間が、ついそのことを忘れさせる間で! だから、急に「好き」って言われた感覚になっちゃって!

……だから……ひとりでヘンに動揺しちゃって。


「じゃあ、今から作りますから。まだ寝てた方がいいんじゃないですか?」
「んー……」


自分が恥ずかしいと思ってるとき、どうも口数が多くなる。
今もまさにそれで。ぺらぺらと言葉を繋げると、ユキセンセはキッチンから見える机を見ながら悩む。