「カズとウチの親は精通してるからさ。アイツのヘソ曲げさせたら、実家に連絡されて、『長い休み、遊ぶだけならたまには帰ってきなさい』って言われちゃう」
「……だって、休み、2カ月はあるからちょっとくらい帰れば、」
「ミキ! 遊べる夏休みだなんて、もしかしたら今回が最後かもしんないんだよ? 全力で、後悔しないような夏休みにしなくちゃ」


力説するメグは、もうわたしの手に負えない。
しかも、メグの言い分もわからなくはない……けど、わたしはそれに当てはまらない。

夏を謳歌するような予定も人もいないし。

あれ。じゃあ、別に渋らないで、メグのバイトを代わってあげればいいんじゃ……。

いや、でも待って。2週間で10万貰える仕事ってどんななの? いかがわしいバイトじゃ……って、紹介相手はカズくんだって言ってたもんね。メグに好意を抱いていると思われる彼が、そんなバイトを紹介するだなんてあり得ないよ、うん。


「って、自分が遊びたいからミキに……って言ってるみたいだよね、私」


空を見つめて考え事をしてるわたしに、メグはしゅんとした犬のように力なく漏らした。

メグが自分で言ってることって、言われる人によっては、まさにそう感じるかもしれない。でも、相手はわたし。別に、『押しつけられた』とか、『わたしも遊びたいのに』とかそういう感情は皆無に等しいから。

それに、わたしはこういう“頼みごと”に弱いと思う。

それが家族や、親しくしているメグみたいな友達なら、特に。


「いや……わたしは別に、そういう夏休み希望じゃないし」
「え! じゃあ……」
「んー……いいんだけど……いいんだけど……」


こんなわたしでも、役に立ってる、って思える気がするから。