「知られたくないんですか?」


なんでだろう? 余計な心配掛けるからかな?


わたしの質問を受けたユキセンセは、額に大きな手をあてて、いつもよりもさらに小さな声で言った。


「なんか……ダメじゃん。オレの仕事なのに、その本人が機能してないって。なんていうか……幻滅されたくない……っていうか」


今度は頭を垂れる彼を見て驚いた。
弱ってる一面をみて驚いたとか、そういうわけではなくて。

その言ってることが、なんとなく、わたしも共感出来るから。

“仕事”というもので自分の存在を確認して、その姿が周りの人にとっての“自分”なら。
その姿を崩してしまうと、期待を裏切るというか、がっかりされるというか。

今、ユキセンセの状況を見て、『そんなことありえませんよ』って心から思うけど、その場所にいるのがもし自分なら、やっぱり同じような不安を抱えていそう。

大切な人だから、自分のいいところを見てほしい。

そんな独りよがりな思い。


「それ、なんか、わかります……でも」


本当、人間って変。ああ、人間っていうか、自分?
自分がその立場ならこんなこと思ったりしないのに、客観的に見られるところからなら、心からこんなふうに言えるんだから。


「そういうとこも、全部受け入れてくれますよ。あの二人なら。むしろ、大歓迎かも」


大切な人だから、自分の弱ってるところも受け止めて欲しい。


心の底では、わたしだってそう思ってるんだ。