結局、撮影可能な場所を確認したり、ちょっとした話を聞いたりしたのはわたしで。
彼はわたしの後ろに立って、ぽそっと質問をしたり、メモをとったりするだけだった。

教会を出ると、一歩後ろに下がっていたセンセが、隣を歩く。

どんな顔をして歩いてるのか、ちょっと気になったけど、真隣りの彼を見上げる勇気はなく。反対に、俯いて、さっきよりも影が伸びてる足元に目を向けた。

ジャリジャリ、と、わたしたちの靴が音を出すだけで、なにも会話がない。


なんか、話しかけた方がいいのかな。ていうか、わたしがこのままだと落ち着かないし。


帰りの道のりはまだまだ続く。
そう思って、わたしは自分の青いスニーカーをみたまま、小さな声で言った。


「ユキセンセは……さっき、なんで急に控えめになっちゃったんですか?」


その質問に一向に返事はなくて、そのまま流されてしまったんだ、と後悔したとき。


「……苦手」


ほんのひとことだけ、返ってきた。


「……対人恐怖症……みたいな?」


外に出て、人と話したりするのが怖いとか?
仕事柄、普段家にいることがほとんどみたいだから、なおさら。


ユキセンセのネイビーのカーディガンを視界に入れながら思った。
すると、さっきよりは早く、センセが口を開く。