「ま、そういうことだから。気にせず仕事、してください」
「ん、なっ……」
「俺、ミキちゃんの昼でも頂きながら、ゆっくり見学させてもらいますんでー」


……これは本気だな。

少ししか話はしたことないけれど、外崎さんっていう人がどんな人かなんとなく掴んでるから。


「……美希にちょっとでも触れたら許さない」
「さー? それはどうでしょう? それが俺の目的だったりするし?」
「おーまーえぇー……」


……『それが目的』とか言ってるけど、本当の本当は、雪生の仕事を見に来たんだと思う。

外崎さんの家にあった、ずらりと綺麗に並べられていた雪生の漫画。
それに、雪生への敵対心は、実は誠実だとわたしは思ってるから。

外崎さんにとって、雪生は“特別”で。
で、雪生もまた、仕事に関してというよりは、人間的に。外崎さんに対しては“特別”な反応をしてみせると思う。


「警察に通報する」
「困るのは澤井さんだと思うけど?(ここ教えたの彼だから)」


その日は一日中そんな調子で。
まるで、素直じゃない男友達がじゃれ合ってるような光景。ご飯を食べた後も変わることはなくて、ひとりだけ笑いながら食後のコーヒーを淹れてたのはわたしだけの秘密。



おわり