「……なんでお前がここにいるんだよ」


キャラに似合わない低い声で、寝起き姿の雪生があからさまに嫌な顔をしてみせる。


「あっ……あのーぅ……」
「敵情視察ってやつ? まーあんまり気にすんな。それにしても、いートコ住んでるなぁ」


それにどう答えようか迷ってるわたしを差し置いて。雪生とは相反して、のんびりと。例えるならば、“我が家のように”ソファで漫画を読み、寛ぎながら動じない声で返すのは――。


「外崎っ!!」


このツーショットを見るのは、あの日以来で。
だから、ドキドキとしていたわたしは、雪生の反応を見て肩を竦めた。

パン! と見ていた漫画を閉じ、ソファから立ち上がる。そしてわたしに近づき、後ろから軽く手を回された。


「っ!!」
「そんな萎縮しないでよ。俺だってケンカしに来たわけじゃないんだし。ね?」
「~~~~すぐ美希から離れろっ」


軽いノリ(?)なのは相変わらず。だけど、わたしの免疫のなさも相変わらずなものだから、どうしても思考が停止してしまう。

そのわたしに代わって声を上げた雪生が、グイッと勢いよく手を引き外崎さんから引き離す。そして、あっという間に雪生の腕の中に攫われた。


「美希! どーして開けたんだよ?!」
「あ……その」
「ほらー。寝起きからそうカッカするなよ。血圧上がるだろ? あ、元々低そうだから、ちょうどいいか?」
「お前は口を挟むなよ! ていうか、根源は外崎だし、早く帰れよ!」
「あーあー。随分と嫌われたモンだな」


あれから雪生は、結構怒ったりする場面も増えたけど。
だけど、こんな感じになるのは、やっぱり相手が外崎さんだけだと思う。