「わかってるよ。オレのために、ってトコでしょ?」


『もちろん!』とコクコク小さく何度も頷くと、雪生がにっこりと笑う。
……だけど、その笑顔、ちょっと裏がありそうな――。


「……でも、オレが知らないことをアイツだけが知ってるっていうのは、やっぱりイヤだ」


逃げ場のないわたしに、これでもかというくらい距離を詰める雪生。
額がぶつかる寸前で、声を落としてこう聞かれた。


「外崎に少し揺らいだ?」
「――ん、んんッ!?」


『そんなわけないです』と全力で否定するつもりが、あっという間に奪われた唇からはなんの言葉も発せない。
無駄に、声を出そうと抵抗したものだから、すぐに酸欠してしまいあえなく断念。

その隙に雪生は口を離し、そっと囁く。


「じゃあ、聞かせて?」


それは、たぶん。さっき雪生がわたしに言ってくれたような、甘い甘い言葉のことだと察した。
そんなこと、わたしにすぐ言えるわけない――と、思っては見たけど、現状。どう見ても逃げることは出来なさそう。


「……ゆ、雪生だけ――です」
「ちょっと聞こえづらかった」
「~~~~!!」


観念して、思い切って言ったのに!! そりゃ確かに、照れくさくて恥ずかしくて、すごく小さな声だったかもしれないけど!!

意地悪を言う雪生を涙目で睨みつけても、やっぱりキチンと言わないと解放してくれなさそうで。

――絶対。ゼッタイ、こんなこと、今までのわたしなんて口にするような人間じゃなかったのに!


雪生と出逢ってから、今までのわたしの常識や人格が崩壊されていく――。


「……あっ愛して、ます」
「――――オレも」


蕩けるようなキスをして。
芯まで熱くさせられた意識のなか、思うこと。

彼のなにかを壊すのも、どうかわたしだけであって欲しい――。




――クラッシュ・ラブ――



END