でも、敵わなくても、わたしはわたしが出来ることで雪生をサポート出来ればいいってわかると、思わず吹き出して笑ってしまった。
「ふふっ。すごい人ですね、秋生さんて」
「ああ見えて、強(したた)かなヤツだよ、ほんとに……」
「また会えますかね? 今度いろいろ教えてもら、おー……」
気持ちが全部整理されて、心から笑っていたら、正面の雪生は少し険しい顔をしていて。
首を傾げると、浅い皺を眉間に作りながら雪生が口を開いた。
「……なんか、勉強してるんだって? 漫画の」
「――――え」
なぜ、それを……!
ギクリ、と、体を一瞬強張らせたわたしの様子を見落とさない雪生。そのまま、じーっと見られてしまうとなにも言えない。
「アイツ……外崎から初めてメールがきた。たぶん、またどっかからオレの個人情報を引き出したな、外崎のヤツ」
ぶつぶつと、文句を言うようにしながらジリジリとわたしに詰め寄ってくる。
外崎さんの一件で、わたしは少しだけ、出来うる漫画の作業を調べたり自己流で学んだりしていたんだけど。
目の前の人は“プロ”なわけで。いくら彼氏といえども、実力も自信もないわたしが、そういうことを影でしているなんて恥ずかしすぎて言えるわけなくて。
『機会があったら』って、ずっと秘密にしていた。
それを、なんで今、言っちゃうかなぁ! 外崎さんのバカッ!
「あのメールは“確信犯”だ。自分が知っててオレが知らない事実を言って、楽しんでる感じ」
ずりずりと後ずさるも、背中にはソファがあって行き詰まり――。