「『reach』――昔(カコ)の自分に、この手を差し伸べる方法。理想のカタチを、自分の手で描いて、納得させて。……自己満足ってやつだけどね」


初めから、そのつもりで――――。だから、タイトルも『reach』にしたんだ。


「『自己満足』なんかじゃ、ない……と、思う」
「……」
「もし本当に、『自己満足』だけだったなら、こんなふうにたくさんの人に受け入れられるような漫画なんかにはなってないと、わたしは思う……!」
「――美」


わたしの名を口にする僅かな隙に、リビング内に訪問者を知らせる音が鳴り響く。
改めて、わたしたちは目を合わせるけど、お互いに心当たりはないようで。


配達員の人かな……? それとも、アキさんが戻ってきたり――?


わたしが思考を張り巡らせている間に、雪生はそっと手を離して応答した。