「……来てたんだ」
「え、あ……はい。メールはしたんですけど……。でも今の、アキさんが部屋に上げてくれて……」


そうしてつい今しがたまでの、一連の流れを思い返す。
すると、心に引っ掛かる箇所がいくつもあって。


「……オレの話、聞いたんだ?」


手はぎゅっとされながら。もう片方の手を、ぽん、とわたしの頭に乗せて言う。
その重みで軽く俯いたまま、わたしは小声で「はい」と答えた。


「……つまんなかったでしょ」
「そんなふうには……!」
「いーのいーの! 大した人生歩いてない、し――」
「どうしてアキさんを慌てて帰したんですか……?」


なにか、触れちゃいけないものがあるから?


「特別な、ひとだから……ですか?」


『自分のおかげで、今の雪生がある』と、迷いなく言えるほどの――。

それを言ったときのアキさんを思い出しながら、とうとう聞いてしまった。
雪生の反応は怖かったけど、わたしは今日、このことを確かめにきたのだから。そう思って、グッと堪えて前を向いた。

すると、雪生は目を見開いた後に、ぽつりぽつりと頼りない声で話しだす。