その音の方へ、わたしとアキさんは同時に振り向く。


「アーキィー…………なにをペラペラと!」


そこに立つのは、もちろんこの家にはあと一人しか存在しなかった雪生。


「だから、アキは『おしゃべり』って言われるんだ」
「だって、久しぶりに人と話したら止まらなくて! それに、誰にでもいうわけじゃないしー」
「にしても、余計なことまで口を滑らせ過ぎ」
「えー? どのことー?」


どこ吹く風、と、全く雪生の顔色を気にせずに涼しい顔をするアキさんに茫然とする。

でも、明らかに、雪生がアキさんに対する接し方は初めて見るもの。
長く話は聞いたけど、結局、なんで漫画家になったかっていうところまでは聞けてないし、根本的な、アキさんと雪生の関係に至っては全く情報がないままだ。

そんな二人を静かに見ていると、その視線に気づいた雪生が、すたすたとわたしの元にやってくる。


「今日はもーいいから。帰っていーよ」
「はぁ? わたしのおかげで今の雪生がいるっていうのに、随分な扱いねっ」
「……なんのキャラだよ、それ」
「ちょっと“ヒステリック女”風にしてみましたー」
「……笑えない」


あ、あれ? なんかアキさんのイメージがどんどんと崩れて行ってる気がするのはわたしだけ?
もっと、清楚で、女性的で――……こういう“冗談”とか言うなんて、程遠い人かと思ってたのに。

呆気に取られたわたしにアキさんが気付くと、くすくすと笑った。