「あ! やっぱり!」


インターホンの先の声の人と、改めて対面すると、笑顔で言われた。

実はここに辿り着く間。エレベーターの中で、わたしもそう思ってた。
もしかして、さっき玄関で挨拶を交わした人なんじゃないか――って。


「あ……さっきは……」


少しは予想していたことだけど、やっぱり、いざそうだとわかるとなんて言っていいかわからない。
微妙な受け答えで、わたしは玄関の隅にちょこんと立ったままお辞儀した。


「なんとなく、タイミングからして『さっき会ったあなたかなー』って思ってたの! あ、どうぞ?」
「あ……はい。失礼します……」


この人は、杏里ちゃんとは違って、話しづらい雰囲気とかは感じない。
歳上らしき女性。ほんの少ししか言葉を交わしてないのに、頼りがいがあって、さっぱりしている印象を受けた。

それにしても、雪生はどうしたんだろう……。

目の前の人も気になりつつ、雪生のことが心配。
とりあえず案内されるままリビングに入ると、その人は我が家のようにキッチンに入っていき、冷たいお茶を出してくれた。

その様子を見て、ピンときた。

――――このひと……。


「あ。自己紹介してなかった! わたし、アキって言います」


やっぱり! この人が、『アキさん』だったんだ!!

ソファの前に棒立ちしたまま固まってるわたしを見て、アキさんは不思議そうな目をして首を傾げた。