マンションに向かう途中、雪生宛てにメールを一件送信する。

あの日の夜に、ようやく連絡先を交換して。メールはほとんどしないらしい雪生だけど、遅くても返事は必ずくれるし、電話も時折かかってきていた。


【今から行ってもいいですか?】。


早急にそれだけを送ると、携帯を手にしたまま、雪生のマンションを目指す。
駅前からは地下鉄もすぐで、それに乗ってしまえば本当すぐに雪生の家に着いてしまう。

けれど、雪生からはなんの返事もないまま。


……寝てるのかな。このまま行っても大丈夫……?


そんな不安を胸にしながら、あっという間にマンションの前に辿り着いた。
もう一度、メールが来てないかをチェックしても、やっぱりなんの応答もなくて。


とりあえず、ここまで来たし……インターホンだけ鳴らしてみて、ダメならまた考えよう。


自分に対して軽く頷き、マンションの入り口をくぐる。
すると、目の前に先客が居て、思わずドキリとしてしまった。


「あ……」
「あ。こんにちはー」


マンションの住人らしき女性は、後から来たわたしに目を向けて、微笑みながら挨拶をしてくれた。
あまりに突然だったから、わたしは声も出せなくて、どうにか会釈だけはしたものの。

柔らかく笑ってくれたあの人みたいな顔は出来てなかった……絶対。