ハラハラと、この場がどうなるのか窺っていたときだった。


「…………オレ、パウンドケーキ」
「……へ?」


ちょっと待って……。今のって……ダレ?


あまりに予想外の展開に、頭と耳がどうやらついていけなかったらしい。
目をぱちぱちさせたわたしの前で、繰り広げられる会話。


「あー。だと思ったよー。ユキ先生は」
「コーヒーはもっぱらブラックのくせに、その辺は甘党ッスしねぇ」
「甘いものあってのブラックコーヒーだし」
「えー!」「えー!」


三人は、さすがに昼夜共にしてるだけあって、兄弟のように仲がいいんだ。
そして、ユキセンセのオンとオフの使い分け。

『休憩』ってなったら、あんな感じになるんだ。
今朝の――ちょうどさっき蒸し上がった、蒸しパンのようにふんわりとした男の人に。


……でも、パウンドケーキ派なんだよね。


「ぷ」っと小さく笑いを零してしまったけど、休憩中の彼らの耳には届いてないようで、わたしはホッと胸を撫で下ろした。