クラッシュ・ラブ


あんなふうに、仕事(漫画)上で愛を伝えられたら。何百人、何千人と目に触れるであろう場所に。
それって、つまり――……。


「公開告白と、同じ……ですよ……?」


確かに、誰にもわからない、二人だけの暗号のようなメッセージ。
だけど、雪生がそれを、日本中の人に曝け出してもいいっていう意味合いに捉えてしまう。

雪生は、少しずり落ちたメガネを手のひらを向けるように押し上げ、淡々と言う。


「美希を取り戻すのに、ただ必死だっただけだけど」
「あ……」
「でも、“公開”することになんの躊躇もない」


そうだった。わたし、あの時に手を取らなかったこと、もう一度きちんと謝らないと……! それと、それがすごくうれしかったことも……。


「あのっ……あのときっ……せっかく迎えにきてくれたのに! あんなふうにしか出来なくて、ごめんなさい」
「……うん」
「雪生が嫌になったとか、外崎さんがどうとか、そういうんじゃなかったの……!」
「……うん。わかってる」


本当は終始目を見て伝えなきゃならないとこだけど、すぐに泣いてしまいそうでそれが出来ない。
その代わり、言葉でたくさん伝えなきゃ、と、思いつくままに口にしていく。


「……澤井さんから、聞いて。一緒にいたのに全然そんなの気付かなくて……」
「……いいから」
「すぐに来なかったのも、どうしても雪生に漫画を描いて欲しくって……!」
「――もう黙って」


結局後半には、明らかに涙声になってしまったわたし。
雪生は、その声を打ち止めさせるように唇を塞いだ。


「……っ」


文字通り、声にならない声を漏らしながら、愛しい感触を確かめる。
わたしに口を開く力がなくなったのを悟ったからか、雪生はそっと唇を離した。