どんな顔をして、どんな言葉を掛ければいいの?
雪生はどんな顔をしてそこにいるの?

なにを一番に伝えるんだったっけ――……。


まごまごと玄関も開けずに考えていると、不意に目の前の扉がわたしに向かって開かれた。


「!!」


このドアは、中から開けられたことは一度もない。
そのドアが勝手に開いたのは、もちろん、雪生の手によって開けられたから。

顔を上げて、目の前にいるのが雪生だというのを認識したと同時に、彼の長い腕が私を掴まえて。部屋に引き入れられると、両腕を回されて抱き締められた。


「――ゆ……き」
「……待ってた」


肩から聞こえる小さな声。強く抱きとめられる感覚。
たった数日なのにどれも懐かしくて――そして、飢えていた。


「ご、めん……なさい……!」


目をぎゅっと瞑り、雪生の背中に手を回す。
その言葉のあとには、どちらからもなにも口にしなくて。

その分、全神経が雪生の全部を感じ取るように集中出来る。

こんなふうに、自分からも力強く手を回すのは初めてかもしれない。
いままでなら、こんなに長く密着していたら、茹でダコのようになって、呼吸もまともに出来なくて。恥ずかしくて、すぐにギブアップしてた。

でも、今のわたしは。


「――――会いたかった、です」


こんなことまで言えるようになっていて。


「……オレも」


するりと拘束していた手を緩め、今度はわたしの顔を挟むように両手を添える。
そのままクイッと軽く上へ持ち上げられると、鼻先が触れる手前の雪生と目が合った。