淡い期待を胸にしながら、ようやく次へと読み進める。引き続き、マネージャーと男バス部員の初々しいシーン。


【テーピングなんて……誰でも出来るし】
【でも、それを一生懸命勉強してたの、オレ知ってるよ】
【それくらい、やらないと……あたしには、なにもないから……】


そう。こういうとこが、本当に共感できるところで。
自分の取り柄がわからないから、せめて今出来る役割や仕事をこなしたい。それで誰かに褒めて貰えるなんて思ってないから、気付いてくれただけですごく報われる気がして。

感情移入しながらページを捲ると、またも気になるセリフ――。


【“なにかある”から、オレはマネージャーに惹かれてるんだと思うよ?】


――これも、だ……。

『“なにかある”から惹かれた』と、これと同じ、そのまま言ってくれた言葉。

それを思い出すと同時に、目頭に熱いものが込み上げてくる。
立ち読みをしながら、手を震わせて泣きそうになっているところなんて誰かに見られたら。絶対ヘンな目で見られてしまう。

堪えなきゃ、堪えなくちゃ――。

そう思ってたのに。


【自信持って】


最後のそのセリフで、我慢できなくなったわたしは、乱暴にその雑誌を元に戻して店を飛び出した。

勘違いかもしれない。
ただの偶然。わたしの思い込み。

それでも、あなたの手で描いたものがこんなに胸を焦がすのは、紛れもない事実だから。

一度溢れだした感情は、とどまる術を持たなくて。
いつしか、小学生ぶりくらいに全力で、変わらない道のりを蹴っていた。


変わったのは、わたし。

そして、わたしを変えたのは――――雪生。