「おんなじモンだとは思えなかったけど。あれ、なに」
「『なに』って……そうめんですけど……」


折りたたみの簡易テーブルに向かってるわたしは、手元を見たまま答える。


「そりゃわかるっつーの。つゆ? っつーの? なんか違った」
「……それも、ここにあっためんつゆです」


後ろには外崎さんがいつも作業しているであろう机があって、わたしたちは背を向け合って会話をしていた。


「あ。でも、オリーブオイルを少しだけ入れましたけど……」
「それだろ、ゼッタイ」
「……あまり好みじゃなかったですか。すみません」


オリーブオイルが男の人の一人暮らしのキッチンにあるくらいだから、好きだと思ったんだけどな。
でも、勝手なアレンジ加えちゃったわけだし、シンプルなのが希望だったのかも。

手を少し止め、そう考えていたら、後ろから聞き逃してしまいそうなほどの一瞬。


「……旨かった」
「え?」


思わず振り向いてしまうほど、意外な答えに戸惑った。

振り返ったところで、外崎さんも仕事をしていてわたしの方なんか見向きもしない。
椅子の上に片膝立てて、そこに腕を乗せながらパソコンと睨めっこ。

雪生とは違う姿勢に、改めて雪生は基本的な姿勢が綺麗だったんだな、と認識させられる。

外崎さんの背中に雪生を思い出してしまって、軽く頭を振ると、また前を向きなおした。