「あーあ。つまんね」


……やっぱり、きっと、この人優しい人だと思う。

ささっと、お世辞にも片付いてない机を彼なりに整理し終えると、椅子に浅く腰を掛けた。
パソコンの電源を入れ、立ち上がるまでの微々たる時間の隙に――。

『ぐぅ』と、力の抜けるような空腹を知らせる音がわたしたちの耳に聞こえた。
それはわたしからじゃない――となると、残るはひとり。


「……照れてます?」


思いの外、恥ずかしいのか。さっきから全然動かず、なにも言わない外崎さんに、つい小さな笑いをこぼしてしまう。
それを聞いた彼が、顔を僅かにこちらに向けた。


「すみません……。なにか、用意しますか?」



――それから。
特になんのリクエストもされず、しいて言うなら“家にあるものでテキトーに”という流れになったわたしは乾麵を見つけた。

夏にぴったりのそうめんを茹で、冷蔵庫に残っていた大根をすりおろし、乾麵の隣にあったツナ缶を開けて盛りつけた。
めんつゆを冷えた水で薄め、隠し味にオリーブオイルを混ぜる。

一人暮らしということだからか、ほとんど野菜とかがない中で、わたしにはこれくらいしか出来ない。
一体、普段はどんな食生活をしているのかな。

オリーブオイルがあるところを見ると、パスタとか作るのかな。
雪生もだけど、この仕事をしてる人って、食に対しての欲があまりないように感じる。

一に仕事。二に睡眠……みたいな。


「あの、どうぞ。よかったら……っていうのもおかしいですけど。ココのものを使ったので」
「……どーも」


奇妙な時間。
ふらふらとついてきたわたしもわたしだけど。こうして、雪生の同期という外崎さんに食事を用意するなんて。