マンションについて、ガランとしたリビングに一人ぼーっと立っていた。

明日にはカズたちが来るんだから、やらないと……。
そう思ってはいるのに、手に力も入らず、メガネも外してデスクに置いたまま。

夕陽になりかけた空を背に、力ないまま椅子に背を預ける。未だぼんやりと、目の前に広がる用紙やペン、資料をただ眺める。

すると、ピンポーン、と共同玄関からの呼び出し音が部屋に響き渡った。


――美希!


カララ! と勢いよくキャスターを転がすと、デスクにすれすれで通り、インターホンの受話器に手を伸ばす。


「はいっ」
『あ、おれ。澤井』
「…………」
『なんだよ? あ、さては彼女と間違っ』
「どーぞ」


忠誠心ある犬のように飛び付いたものの、ふたを開ければ全く希望してない結果でした、という惨めな展開。
がっくりと肩を落としていると、その間にも澤井さんが上までやってくる。


「お疲れさん。約束のモノ持って――あれ? 一人か?」


静寂なリビングを見渡して、澤井さんがさらに言う。


「あの新人の……杏里、だっけ? その子も帰ったの? 和真くんたちの入りはまだ?」
「……明日から、入ってもらおうと思ってますけど。あのコは……早々に帰ってもらいましたよ」
「あー……ま、そんなことにもなるかなーなんてちょっと思ってたから。驚かない」


バサッと色紙が入っているであろう茶封筒をデスクに置いて、澤井さんがソファに浅く腰を掛けた。
組んだ足の上に肘を掛けて、立ったままのオレを見上げる。